カットモデル

　昨日、十何年ぶりに美容室に行きました。嫁が働く美容室の若いスタッフの刈り上げのカットモデルとしてです。
バリカンでジャジャッと済んでしまう坊主頭をハサミでやってもらえるというのは非常に贅沢な感じがします。

　久々に足を踏み入れる美容室は若干の緊張を私に与えました。
なんだかちょっとぎくしゃくした足取りで促されるまま、まずは洗髪椅子に座りました。仰向けにひっくり返って座るあの椅子です。

　頭を洗ってもらうだけなのに両肩、握りこぶし、足先に力が入ってる？？？
歯医者の椅子に座ってると身体が勝手に勘違いして反応したようです。

　五ミリしかない髪の毛を念入りに洗ってもらいマッサージまでも。この時点で充分弛緩しきってしまいました。家に帰ってビール飲んで寝たいかも、、、

　いよいよカット開始です。ハサミでジョキジョキされるのはとても心地良いです。ああ久しぶりの感じだなあと思いながら、ふと斜め後ろのお客さん（あとで知り合いだと分かる）とスタッフの会話のやり取りに耳が反応しました。

『ああそうか、なんか喋んなきゃいけないのか？』

　というか、今回私はカットモデルなのでタダなわけで横柄にしてるのもなんだかなとか彼女も慣れない刈り上げで若干緊張気味なのかも知らんしここは会話でリラックスしてもらった方がいいのかも知れんなとか変なスパイラルに入り込んでしまったのです。
　それもこれも、久々の美容室の雰囲気のせいなのです、多分。

　そういう時に限って気の効いたトークは出来ない訳で、なんだか若い頃上司に連れられて行ったキャバクラを思い出しました。
　トークが盛り上がる斜め後ろの席が恨めしくなりました。

　と、私の席にもうひとり女性スタッフが。ハンドマッサージの練習をさせてくれとの事。断る権利はありません。なにしろ練習台として来ているのですから。
　
　ですが、若い女性スタッフ二人に手を握ってもらいながらカットしてもらうわけです。オレはどこぞの王様か？緊張するなと言う方が無理ってもんです。マッサージで弛緩するそばから肩が凝るという感じでした。

　とにかくも、久々にとても贅沢な経験をさせてもらえました。これから一ヶ月間、毎週カットモデルです。

　果たして私はあの雰囲気に慣れる事が出来るのか？

Photo:Nov.'09,kichijoji,tokyo,japan